■お題■

◆切原赤也
永遠の眠りを君に/掴んだこの手は離さない/赤い瞳の奥/好きで傷つけてるわけじゃない/
どうか、僕に安らぎを/心地よい高揚感/非道なまでの壁/狂気に満ちた笑み




【永遠の眠りを君に】

 

穏やかに俺の横で寝息をたてている、ひと。

今日は晴天。昼下がりの屋上はとても心地のいい風が吹き渡って、まるでここだけが切り離されて、ゆっくりと時間が流れているかのようだ。
ずっと、このまま…このままでいたい。

視線を屋上の縁から下に向ければ、クラスメイトたちが午後の授業を受けていた。
ノートをとったり、友達と喋ったり、寝ていたり。壇上の教師はひたすら何かを黒板に書いている。時折生徒に向き直って身振り手振りも交えて何かを話してる。…音がないから、面白いな。そんなことを思いつつ眺めていた。
それは、ありふれた日常。

俺たちは、ここにいる。
悪いことをしているハズだけど。
心は穏やかで、幸せに溢れてる。
けれどそれはアンタが目を覚ますまで。
覚めたら現実に戻ってしまう。
魔法のような、その眠り。


ずっとそばにいられるなら。
このまま、ずっと。

でも、笑ってる方がいい。怒ってる方がいい。
やっぱり、起きてよ。
こっちを見てよ。

その眠りを覚ます、合図はなに?



【掴んだこの手は離さない】

我が儘だって、ひとは言う。
だって、離れたくないんだから仕方ないじゃないか。

俺はこのひとと一緒にいたいんだ。
それの何が悪いの。


やっと手に入れたんだ。


見ているだけだった。
何気ない視線を感じるだけで、どきどきした。
憧れだった。

そのひとの手を、ようやく掴むことができた。
その時は奇跡のように思えた。

だから、離さない。
何があっても。

たとえ俺が壊されても。



【赤い瞳の奥】


自分では気付かなかったけど、俺の目は興奮したりすると充血してくるんだそうだ。

じゃあバレバレじゃないか。
俺が今何を思っているかとか、そういうの。
ってことは。
アンタの前じゃ、ずっと赤いのかもね。

けど、本当の心は見える?
俺の瞳の奥に隠れた、まだ誰も知らない何か、見える?

俺にもよくわからない、この感情。
楽しいも、哀しいも、怒りも、喜びも。
アンタの前じゃ、振り切れちまうんだよ。

瞳が赤くなったからって、答えはひとつじゃないんだ。
それがどれだか、俺にもわからないかも知れない。
こんなこと、初めてだから。

アンタなら、わかってくれる?



【好きで傷つけてるわけじゃない】

知らなかった。
知らないうちにアンタのこと、傷つけてたなんて。

アンタは言った。
『無意識でやってることなんだろうけど』
と。
『何をやったか、自分で気づきなさい』
と。

初めて知った。
自分の行動がひとを傷つけてるなんてこと。
故意にやることはよくある。
けど。だけど、そんなの。ない。
俺はアンタが好きなのに。

俺の何がいけなかったの?
俺はアンタが傷つくの見たくてやったんじゃないよ。
本当に、知らなかった。アンタが言うとおり、『無意識』だったんだ。

知らない、気づけないのが罪だというなら。
『無意識』の俺にはなにもできない。
ただ許しを請うだけしか。

俺、アンタに傷つけられても、我慢する。
だから、何がいけなかったのか教えて。

もう傷つけたくないよ。

 



【どうか、僕に安らぎを】

 

身体が痛い。
心が痛い。
なにもかもが、痛い。

たすけて。
アンタの手だけが、俺を救えるから。
伸ばして、その手を。

 

 

 

【心地よい高揚感】

相手を叩きのめす。
なんてキモチのいい瞬間だろう。
わかる?
特に、大・逆転、なんてね。
余裕で相手を倒していくのもいいんだけどさ。
調子乗らせておいてそこを一気に叩く。とか、もう最高。
強い相手ほど、ぞくぞくする。

この気持ち良さ、あのひとたちを前にして得られるかな。
考えるだけで鳥肌が立つ。


ふと横にあった鏡を見てみたら。
真っ赤に染まった瞳がこっちを見ていた。

 

 

 

【非道なまでの壁】

あり得ない。
初めはそう思った。

だけど、もうすぐ。
手が届く気がする。

後ろ姿が、見下ろす視線が、近くなった。
さぁ、あと少し。



 

【狂気に満ちた笑み】


大事なモノに対しての執着というか、そういうものへの感情は表裏一体だって柳生先輩が言っていた。
『純愛』と『狂気』。

あのひとが言うんだから、正しいんだと思う。
その境界線というのは曖昧で、ともすればぼやけてしまう、とも。

俺が試合相手をぶちのめす時と、あのひとを好きだと思う時に浮かぶ笑顔は…同じなのかも知れないな。

そう思うと、難しいけど少しわかった気がした。

 

 

 

 


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