零れた幸せの行方




ふぅ
また溜息。

――さっきから、何回目だろう?
都筑は読書をしながら溜息をついている人を見遣る。
休日のリビング。
整えられていない前髪が蒼眸を隠しているから
その表情は窺えないから
先ほどから零れている溜息が気にかかる。

――溜息ばかりついていちゃ、ダメだよ
もどかしい想いで、都筑は唇を噛んだ。

だって、溜息をついたら


ふぅ
癖になっているのだろうか、また、溜息が漏れた。


「もぅ!」
都筑は手にしていた雑誌をそのままに、巽の所に近寄った。
「どうかしましたか?」
突然の都筑の行動に、巽は目を丸くして問う。
都筑は唇を尖らせると、隣に座った。
「いったい…どうしたんですか?」
本を閉じて自分の方を向く男の唇に指を当てる。
「溜息」
巽はその言葉に瞬きを幾度かし、都筑の行動の理由に辿り着くと苦笑を唇に刷いた。
「あぁ…気になりましたか?」
なんでもないんですけどね、と巽が小さく笑った。
「ちょっとね」
都筑は巽の唇に自分のそれをそっと重ねた。


「今度から、溜息をつきたくなったら俺に言ってよ」
軽く重なったはずの口吻けなのに、都筑の顔は紅潮していた。
くすくすと笑っていた巽はその言葉に片眉を上げた。
「どうしてですか?」
「だってさ、溜息を一つついたら、幸せが一つ逃げていっちゃうんだろ?だから、溜息を俺が貰っちゃうんだよ」
キスしてさ、と、先程よりも赤い顔をして都筑は言う。
驚いたような顔をして聞いていた巽だが、柔らかい笑みを浮かべて、都筑を引き寄せる。
「それでは、あなたに幸せが行ってしまいますね」
都筑は微笑んで巽の頬に手をあてた。
「大丈夫だよ。またキスすればいいんだから」
黒髪を梳く指が止まる。
「……幸せが戻ってきますか?」
「戻してあげるよ」



だから溜息の代わりにキスをしよう



fin





For 桃月洞 with sweet kisses

友梨様にいただきましたvvv

本部長!お願いを聞いてくださってありがとうございました〜vvv
ネタ元は、『うたたね』にある「約束〜a period〜」への火月の感想メールから
だそうで…照れ照れ。///
あ、いやもちろんそれが全てではないですが。(笑)
友梨さんの紡がれる言葉はとても温かいので、大好きですv
本当に、ありがとうございましたvvvvv


溜息の代わりにキスを、そして幸せを分け合いましょう。

友梨様のサイト『うたたね』へ!!

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